記憶
ばあちゃんが骨折をして入院した時、お見舞いに来てくれた人や退院してからのちょっとしたことを便箋やノートにポツポツと書き留めているものを見つけた。
そういやばあちゃんの字を見るのは初めてかもしれない。いつもじいちゃんが宛名や帳簿を書いていたからな……。
1ヶ月にも満たない入院の、日記。
普段はじいちゃんのことをお爺さんと呼んでいたけど、日記ではさん付けだったりちゃん付けだったり…何歳になっても、ばあちゃんは少女のようだったのではないか…。
そんな日記に私の名前を見つけた。
お見舞いに行った時と、ビニールハウスのビニール張りを手伝った時のこと。
ばあちゃんの中に自分がちゃんといた。
突然消えてしまった存在と自分との接点が、
文字で残っていたことに感謝した。